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キッズがはじめてFM福岡のDJを担当した頃は、スタジオライブとかとにかく練習風景のテープのようなものまで沢山流していた。そしてそんな曲の中に何曲か面白いのがあったけど、最近のライブではなかなか演ってくれないような曲がある。 当時、エアチェックしたテープを聞いているとまさに"ラフカットダイヤモンド"、完成する以前の荒削りの名曲がころがっている。キッズの曲、桐明孝治の曲は詩とメロディラインが新奇性のゆえんで、練習曲レベルでもキラキラと彼の個性が光っているのが分る。 生ギターとハンドクラップで紹介した"無駄な事さ"という曲などは、メンバーと一緒にワイワイと冗談ぽく演ってくれたけど、まさにあれこそ本当に音楽を 楽しむ、つまり、音楽のルーツといえる曲であろう。…… キッズは歌心のあるバンドである。 当然ラブソングを作るけど、そればかりじゃない。暴力とか社会に対する意見も歌う。 "とにかく我慢する程、俺はオイボレじゃなかった" "毎日同じ繰返し、そんな事俺のガラじゃない" "表通りの奴らに一泡吹かせてやろうぜ" "やるべき事じゃなくて、やると素敵な事さ、あんたらが捨てて行った、残り滓をしょわされ…." 言葉の要らない、言葉も持たないハードコアパンクの代弁者ともいえるフレーズが無数に有る。 キッズの場合、メロディラインが特に奇麗で、さすがに桐明はフォーク出身という感じで、反逆的な詩も奇麗なメロディラインの上にのっている。もし将来キッズの曲がヒットしたら、子供や女の子なんかが、鋭い社会的な曲を日常口ずさんだりするじゃないかと思う。 ラブソングを歌うバンドは数多いけど、なかなか社会的な曲までは手がまわらないようで、キッズはラブソングも社会的な歌も歌えるという点では特異な存在だろう。 "年をとれば、それなりに繕って処女をウソぶき相手を捜すそうさ。 "スターなんかに憧れる女は、サイン気取りで夜を過ごしてる" このフレーズは"グルーピーガール"の中のもので、両刃の剣であるグルーピーについて本音を歌った曲である。しかしロックの曲中に「処女」なる単語がぎこちなく入っていて、やはり桐明孝治は詩人なのかと思う。 「ヴァージン」はロックで頻繁に使われるが、大時代的な「処女」はフォークの曲でも珍しいはずだ。 "自由になったら毎日違う女が抱ける" これは過激。PTAに怒られるなあ。 キッズのラブソングの佳曲の一つに"ナイティーンエンジェル"がある。 この曲は佐谷光敏の"バレンチノを気取って"と並ぶ珠玉の名作である。 "お前といると時間が止る" "お前がいないと動けなくなる" 男は女を愛していた。しかし男にはなすべき事があった。 ロッカーと愛人、学生とOL,サラリーマンとホステス….実り難い愛の終焉を歌った曲である。 桐明孝治は曲中ではっきり言っている。 "男は夢を追い続け、女は惚れて泣きを見る" 吉行淳之介の「恋愛論」、ラ・ロシュフコオの「言集」から抜粋したフレーズといってもおかしくない名言である。 "男にとって大事な事は、女にとっての事じゃない" 男は自分のおかれている状況を把握している。 "はじめから分っていただろう。俺は影の様なもの….だからナインティーンエンジェル行かせてくれ" 男はギターケースを持ちコンサートホールへ向った。 キッズのラブソング中の"ナインティーンエンジェル"が現実を歌ったものなら、彼らの理想を歌ったものが"ジェイン"であろう。 "ジェイン"は全編甘いフレーズでつづられている。ポップなコード進行を用いておりちょっと聞く分には古のグループサウンズの曲のように思われる。 しかし、この甘さには裏ずけが有る。 "抱きしめたい""いつまでも離さない" "振り向いて""笑いかけてくれ" と、砂糖たっぷり、ミルクたっぷりのコーヒーのような語りが続く。 そしてこの曲の2番ではジェインなる女の子の過去について歌っている。 "ブランデーグラスにあいつの面影が写る。忘れちまいなあんな意気地無しの事なんか" 男はジェインに、 "気にするな""心配するな"と訴える。しかしこの詩は裏読みが出来る。 意気地無しのあいつは桐明孝治自分自身の事なのである。 この歌は桐明が過去に愛した女性たちへの鎮魂歌であり、これからはきっと力いっぱい愛してやろう、幸福にしてやろうという彼の決意を歌ったものである。 桐明孝治はメッセージソングとラブソングを書く。二つの側面を持った、バイ・ファンクショナルな詩人である。 <次頁へ続く> |
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