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ロック・バンドは来たり、去る。 されど、ロックンロールは未だ来たらず。 第4回マンネリ・ブギで夜を吹っ飛ばす ―――ストリート・スライダーズの人気の秘密――― |
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一体、これは何なんだ。ストリート・スライダーズ・ファンの総スカンを覚悟して、本音を言ってしまおう。普通ならこの手のやつには一も二もなく心躍らされてしまうはずなのに、なぜか腰が重い。踊れないよ、ちっとも。誰か乗り方を教えて!動かないよ、腰も気も。はい、ではこれでおしまい。 と行きたいが、今回は難行苦行、試練がやって来た。私は楽しい音楽しか好まないのになあ。嗚呼!自他共に認めるように、彼らの出どころはローリング・ストーンズのように思える、一応は。それも『メイン・ストリートのならず者』と『ベガーズ・バンケット』でもストーンズがあの中で演じたぐつぐつ煮えるような狂気も喧噪も、一触即発のあやうさも、さまよう心も、彼らのアルバムの中からは残念ながら感じ取る事が出来なかった。曲作りの骨格に関してだけ、「ストップ・ブレイキン・ダウン」をヒントにしたと思えるのが数多くあるという抜け目のなさを感じ取ったけど。音の錬金術とは、こういう時にもあてはまる(!?)のかと変に感心。全くたいした才能だと唖然となった。 彼らの演奏を聴いて感じる事は、寒々とした乗り。鉛のようなずんと沈む金属的な乗り。この手のバンドの演奏の一番のチャーム・ポイントになるリズムの“うねり”はほとんど伝わってこない。走る場合でもその疾走感をより印象深いものにするために逆に必要な“ため”、これも感じられない。あまりにリズムが滑べっている。もっと地面を打つような感覚(ストンプ感と呼ぼう)が欲しい。 イメージで言えば、場末の映画館で観る安あがりの映画(それら自体はとても好きなのだが)の寒々とした幕間音楽。想像力を萎縮させる四畳半世界。私にとってのストリート・スライダーズはと言えば、本質的には歌謡曲バンドだと言わざるを得ない。彼らの一見、異端者的なイメージは歌謡曲世界のイメージで、ロックのそれではない。ロック風やさぐれ演歌とでも言おうか。だから私には、「すれちがい」や「道化者のゆううつ」や、「One Day」といった、ロックのビートを感じさせない曲の方がすんなり聴けた。それはほとんど私の感情移入を必要としないからだ。 もしストリート・スライダーズをロックだとすると、日本で、村八分とサンハウスが切り開いたエレクトリック・ロッキン・ブギーの地平から逸脱する事はなはだしく、この両者が持っていた動感や狂気や抑揚や裂け目といったものとはほとんど無縁なところで聴衆との関係が成り立っている。それはとりもなおさず、村八分とサンハウスの出現で、日本でせっかく芽ばえたブギー・カインド・オブ・ロック(ブギーを基本としたロック)の発展のなさの端的なあらわれであり、ストリート・スライダーズのそれはダウン・タウン・ブギウギ・バンドよりも更に後退している気さえする。潜めた爆発力も狂気のかけらもない、単なるポーズとしての異様さ、反逆性がもてはやされる世相に、日本のロックの創造性をさまたげるいろいろな要因を感じてしまう。 まず、聴衆の、井戸の中から一点の星を見たようなロックに対する視野の狭さと、想像力の欠如。だからこそ、一見視覚的に訴えるものにのみ興味が集中する。しかも、ある種の意図的な大衆操作の臭いにかえも鈍感であるようだ。ロックは本来肉体的なものだが、決して具象的なものだけにとどまらず、聴き手/受け手に種々の想像力をかき立てて多彩なイメージ世界を共有させるものである。だからミュージック・ヴィデオなどが市民権を得たとしても、それはロック音楽が放つ豊じょうなイメージのほんの一部を映像化できるにすぎない。だから我々にとってロックは、まるで目でも閉じるかのとうに白紙に近い感受性で接するのが望ましい。自分だけの感性を信じていい。それは何にもかえがたい。だから、そのイメージ体験を終わる前に、先に映像/視覚的なものを目に入れてしまうことの方が少なくない。まず音楽そのものから来る想像力や妄想をあふれさせよう。ロックは現実を色濃く反映する想像力の音楽である。 1984年の最大の茶番劇であったあの手の路上好意的売名集団がはびこるあたりが、わが国の昨年の音楽事情をよく物語っている。テアトリカルだとかヴィジュアルだとかいう曲者に振り回されすぎている。他のものは別として、ロックは視覚的な効果をも越えたところにその魅力の源泉があるだから、ロック映画も映画音楽(ロック)も、更に言うならロックオペラも、ロックが内包する許容量から見たらほんの限られた世界しか表現できない気がするつまりは、補完物ぐらいの意味しかない。もちろん視覚的なものも必要だがそれがすべてではない。それは黒沢明の映画を音楽化文章化できないのと同じことで、いい映画は自らイメージを続々に放射し、すこしもすりきれず、数重なる観賞に耐えて、その光沢を失わない。 こういった主体性のあやふやな視覚偏重の時代は、白塗り童顔スタァや安全無害アウトローを量産するだけの不毛な消費活動や営利活動をもたらすだけで、何をも本質的に深化させていない傾向にあると思う。 ストリート・スライダーズはそういった時代の窮児の一種であるとは、あまりに独断すぎるだろうか。 多少しらじらしい気もするが、各アルバムの採点のみを載せて、ファンや関係者のひんしゅくを一手に買って終わりとしよう。 [( )はアルバム収録曲の平均点]
@『スライダー・ジョイント』(4.6) A『がんじがらめ』(4.7) B『ジャグ・アウト』(4.8) ( by 松本康/JUKE RECORD ) |
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