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例えば君がAというバンドが好きだったとする。もしもそのレコードを百人の人に聴かせたら、百通りの感想が返って来るだろう。音楽の歴史の中で製作サイドは常に受け手をリードしてきたと言えるが、最近そうとも言えない様だ。現在の音楽業界の不況は受け手の感性の多様化にもはや既成のシステムでは処理できない事を表している。進化の段階で消えていった恐竜のように巨大なシステムは常に自己崩壊の可能性を秘めているのだ。画一的な価値観を押しつけられることに飽きた人達は新しい何かを求め始めている。それは本当に自分達が必要なモノであり、それぞれの生活にマッチしたものであろう。 今回紹介するFLAT FACEは現在の日本の音楽シーンの中で非常にアグレッシブかつユニークなスタンスを持ったバンドだ。メンバーは武末充敏、淑子の2人。当然2人は夫婦であられる訳だが、この2人のバランスがFLAT FACEの魅力であり、パワーになっている。そのレコーディングは非常にセッション的であり、詩とメロディーとフレーズが同時進行的に出来上がっていく様は抑制の効いた演技を見ているような気分にさせる。あたかもキャッチボールをしているかの様に彼がフレーズを投げかけると彼女はそれをメロディーにして返す。だからパートナーとしては唯一無二。世界で一番小さいバンドと言う訳も分かります。1stアルバム「FACE」を聴くと一見自然発生的なサウンドに聴こえるが、クールな表面の下にざわざわとせめぎあうものが感じられる。例えばアーティスト(表現者)であり同時にプロデューサー(調整者)である事やアマチュアという位置を保ったままメジャーなレコード会社からレコードを出す事など、様々な矛盾がこのレコードを陰影に富んだ物にしている。 「アマチュアリズム」という意味では最初にトーキングヘッズを聴いた時のショックを維持させたいと思っています。プロデュースからミュージシャンのセレクトまで全部自分でやったのは自分の信頼できる仲間から選ぶ方が自然だし、それ以外有り得ないと思ったから。こういうのはメジャーな方法論じゃ無理ですね。しかし、いくら僕らの音楽が自分のモノだと言ってもレコードになった段階でそれはやはり商品に過ぎない訳です。つまり僕らはアマチュアであり同時にプロであるという二律背反になるんだけど、こういう矛盾をうまくバランスを保ったまま取り込んでしまいたいんです。」 「例えば映画の歴史の中でヌーベルバーグというのがあるんだけど、ある日若者がポータブルカメラを持って街を撮り始めたんです。大がかりじゃないし、画面がブレてるかもしれないけど、それが面白かったりする。メジャーなものが形骸化していく中で違うシーンとして存在していけるんです。」 <次頁へ続く> |
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